• 滞在21年になりました。 テイクアウトの寿司の販売5年 レストラン経営は2009年1月から。

    佐野ヤンセ順子さん

    職種:
    経営幹部、幹部候補
    勤務地:
    スウェーデン
    経歴: 国際結婚を機にスウェーデンに移り住んでから約30年。魚屋を始める現地の友人から頼まれ、通訳翻訳の仕事と並行しながら週末に友人の魚屋で寿司を販売。友人が魚屋を辞めるのをきっかけに本格的にテイクアウトの寿司屋を始め、2009年1月からはレストラン相模(Japanese Restaurangt Sagami)の経営を開始。

    佐野ヤンセ順子さんの活躍についてお話を伺いました。

    ━━━スウェーデンに滞在することになった経緯は?
    理由は国際結婚です。日本で現在の夫と知り合いスウェーデンに移りました。

    最初はそんなに長く住むつもりはまったくなかったのですが、何となく居心地がよくて20年以上も住んでいます。
    ━━━寿司シェフを目指した経緯は?
    きっかけは、魚屋を始めると言うスウェーデン人の友人に寿司をやってくれないかと頼まれたことです。その当時、通訳翻訳のお仕事も不定期だったので、週末だけと言う事で始めました。

    はじめは一日お米20合くらいの量でしたが、1年後には2人手伝いを入れないと間に合わないくらい人気が出ました。つまり、始めは試しにやってみて、それがあたってしまったわけです。なのでわざわざ元から寿司を目指したのではなく、たまたま寿司が売れてしまったので寿司をやったわけです。動機が不純で申し訳ないです。

    でもお客様あっての商売なので、どんなに自分の作っている物に哲学があっても売れなければ仕方がないと思うんです。だから、私が日本に居たら寿司は絶対にやっていません。その土地でレアな商品を販売しているはずです。当時、スウェーデンでは寿司は物凄く「レア」でした。


    それから、友達の魚屋のところで寿司週末販売(金曜日、土曜日)を3年間やりました。3年やったところでその友達が「魚屋は儲からないからやめる!」と言い出したので、私はちょっと考えました。

    翻訳通訳の仕事も軌道に乗ってきていたのですが、通訳などは範囲が広すぎて、今週は医療の通訳、来週は木材の通訳と言った感じで、夜な夜な専門用語(特に日本語)を勉強せねばならずの状態。翻訳は凝り性の性格の私には時間がかかりすぎて労力に比べて収入になりませんでした。

    そんなときに寿司は顧客がしっかりつき、客層も安いものを求める客でなく、中高年の贅沢が出来るくらい収入があり、美味しいものを求めて毎週買いにきてくれるような客層ばかりでした。結局、翻訳通訳業はきっぱり諦め、寿司業を自分でやってみようではないか、と言う事になったのです。

    また、当時保育士として16年間働いてきた夫が仕事のストレスや耳鳴りで病気療養中だったこともあり、それなら夫も引きいれて毎日寿司を売ってみよう計画を立てたのです。

    それ以降3年間ほどテイクアウトの寿司を毎日販売し、現在のレストラン経営に繋がっています。
    ━━━元々料理好きだったんですか?
    はい、元々料理好きです。小学校のときからお菓子作りが大好きでした。

    実家が自営業(工業)だったので中学校のときから家で晩ご飯の調理をしていました。

    高校、専門学校(デザイン関係)に通っている間は、喫茶店、料理店、レストランバーなどでよくアルバイトをしていました。
    ━━━東京すしアカデミーで何を一番学んだか?
    寿司アカデミーで一番学んだ事は、色々な魚のさばき方です。

    スウェーデンに居るので、ノルウェーのサーモンはいつもさばいていますが、その他の魚はすべて冷凍で既にさくになったもので仕入れます。穴子や貝類ははじめてさばきました。


    また、私が参加したときは同じように外国からの日本人受講生が半分を占めていたので、色々な話を聞けて参考になりましたし、川澄先生の技術や経験も大変勉強になりました。
    ━━━現在の職を得るまでに苦労したこと
    苦労した事? あんまり苦労の覚えがありません (笑)。
    ━━━現地来店客のすしや日本食、日本文化に対する感想・思い(なぜ好きか、何に関心があるかなど)
    スウェーデンでは長野オリンピックあたりから寿司ブームが始まり、首都ストックホルムではたけのこが生えるように寿司屋が出来ていましたが、私の住むウメオ市(※ストックホルムより700キロ北に 位置する約10万人が住む小都市)で寿司を始めたのは2001年当時私だけでした。


    しかし、ウメオ市は小さい街にも関わらず、国立大学が60年代に出来て栄えた街で、年齢層の若い、高学歴の人が住む街であり、海外に出ていく人や外国人も多く、アメリカやロンドンで寿司を食べたという人や日本に仕事を通して行ったことのある人が多い街です。


    その一方で、スウェーデンでは寿司はファーストフードと言う観念があります。

    ストックホルムなどにはハンバーガーショップのように、沢山寿司&コーヒーショップがあり、寿司は安価というレッテルがあるようです。それは外国人経営(中国人、インド人、タイ人、パキスタン人、イラン人)の寿司バーが多く、彼らは違法で労働者を雇っていたりするためコストが低く抑えられるからです(もちろん質も値段通り低いですが)。


    現在、私の住むウメオ市には街に寿司屋が2店しかないのですが、私の店にくる常連さんは美味しい物好きの方が多いです。前に述べたように、日本に行った事のある方も多く、最近は漫画やアニメやゲーム好きの若い人も沢山来ます。「NARUTO」を読んでぜひラーメンが食べてみたいとか(笑)


    あと、寿司はヘルシーだと考えている人も沢山います。砂糖が沢山入ったすし酢が混ざっているのを知らない人が多いですね。ガリが体にいいとかいって沢山買って行く方もいます。
    ━━━現地来店客の横顔(年齢、職業、性別など)
    うちの顧客はかなり年齢層が高いです。
    昔からの常連さんに中高年の方が多いので‥‥


    あとは若い方も増えてきましたが、うちの寿司は値段も余り安くないので、学生などお金のない人はまずしょちゅうは食べに来ません。毎週来てくれるのは30プラスの年齢層です。経済的に余裕のある人ということで、いいお客様がついています。

    残念ながら、今のところ一般向けの飾り巻きのクラスはやっていないので‥‥。
    ━━━現地で人気のすしメニューや日本食メニューは?
    うちの店のヒット商品の一つにちらし寿司があります。
    実はこれは職員の昼ご飯として食べていたものです。

    商品化した後も、元はサーモンの端材を利用できる商品として1日10個のみ作ったものの、あまりに美味しいとの評判で今では夏のピーク時には200個作っています。

    このちらし寿司は、寿司をサラダ感覚で食べれるように作ったもので、寿司に抵抗がある人でも無理なく食べられます。まるで醤油とわさびがドレッシングのようになった一品です。60クローナ(約72円)でお腹もいっぱいになる上に、クリームチーズのマイルドさがうけて寿司ランチとして人気です。


    うちではサーモン&エビ、アボガド&豆、ローストビーフの3種類があります。
    魚の食べられない人はローストビーフが食べられますし、ベジタリアンにはアボガドがうけています。サラダ感覚で誰にも食べてもらえるこの一品はどこの国でもうけると思います。


    余談ですが、ヨーロッパは環境保護や動物愛護のためのベジタリアンやビーガン食の人が多く、ベジタリアン寿司のバリエーションが多くないといけません。握るときに魚を触った手も使えないくらい厳格です。みそ汁もこぶだしがあればそれを使いますが、うちでは野菜ブイヨンを使っています。


    人気のある日本食メニューはやはり揚げ物。
    唐揚げ、トンカツ、フライ、天ぷら、などなどです。スウェーデンでは家庭で揚げ物をしないからか、人気ですね。それだけでなく、揚げ物だと同じ量の肉でもボリュームが出るというのもあるかもしれません。反対に、煮物は色も悪いし全然受けがよくないですね。一度揚げてからソースにからめる方がいいです。私たちは飽き飽きですが‥‥。


    また日本でおなじみのトンカツソース、からし、ポン酢、ごまだれなども初めての新鮮な味のようで、ただのサラダに醤油味のドレッシングをかけただけでも、「このドレッシングのレシピ教えて!」と毎回聞かれます。
    ━━━現地でお勧めのすし店とその理由(店名、住所、電話)
    お勧めはやはり当店です!


    当店ではランチは8個100クローナ、12個120クローナ、日替わりジャパニーズランチが2種類どれも100クローナ、ベジタリアンの日替わりランチが1種類100クローナで、ランチには野菜のつきだし、日本茶とフルーツがついています。

    街のどこのレストランと比べてもうちのランチの単価は一番高いです(相場は70-90クローナ)。ランチは毎日だいたい40食から70食出ます。


    その他、一日中テイクアウトもやっています。
    こちらは寿司6個入り60クローナ、9個入り90クローナ、12個入り115クローナです。


    日本人のお客様には特別メニューもあります。
    ━━━やり甲斐や楽しさを感じるときはどういうときか?
    やりがいを感じるのはやはりお客様の一言。

    「これは本当に美味しい」とあまりしみじみと語る人がいると、「今まで美味しいもの食べた事がなかったのね、かわいそう!」なんて考えてしまいます!でもホントにうれしいです。


    楽しさを感じるのは忙しくて死ぬほど走り回っても、「かえって楽しい!」と言ってくれるような職員を持つこと。

    自分がいくら仕事ができても、人を動かす能力を持つ事、また楽しいといって動いてくれる人を集めることがこの仕事で一番大変です。でも、それが出来たとき楽しさを感じることができます。
    ━━━今後の目標を教えてください。
    今後の目標は、この1月でオープンして2年目になる「相模」でもう少し自分が「現場」を離れて、職員に仕事を任せていけられるようにすることです。


    2年目は1年目に比べて売り上げも毎月確実に上がっています。うちはあんまり大げさな広告はせず、口コミで評判をあげていくのが目標だったので、かなりその成果があがっているようです。


    これまでは、自分のお店として経営が成り立たないと困るので、私自身かなりたくさんの時間をつぎ込んできましたが、もうすこし私がいなくても成り立つお店にしたいです。

    いつかは2号店もいいかなと思っています。
    ━━━これから海外を目指す人へアドバイスをお願いします。
    ●寿司職人として海外就職を目指している人へアドバイス
    ①寿司以外にも最低限の料理の基本を習得すること
    (例えば野菜が切れる、肉が焼ける、餃子がつくれる)

    丁寧にできても手早く作れなければなりません。手際の良さが大事です。
    ②寿司の技術があること

    日本で最低3年は経験がないと、雇用はかなり難しいと思います。
    ③英語があまり出来なくても、身振り手振りだけで人と積極的に会話をすること

    引っ込み思案の人にはあいません。


    日本人からしてみると、海外で仕事すると言う事は未知の世界においてのチャレンジでワクワクするような感じかもしれませんが、夢と現実はかなり違います。気候があわなかったり、文化が合わなかったり、想像と現実のギャップの差はかなり多いでしょう。


    ●海外で寿司やまた日本食レストランを経営するにあたってのポイント
    ①その国のシステムを最大限利用する
    (会社設立の補助金や融資補助、一定期間の給与保障、職員の補助など)
    ②同じ街のレストラン経営者と仲良くなる
    (同業者との意見交換はものすごく大事)
    ③ホールの職員はその土地の人を利用する
    (語学に達者で料理の説明ができるひと、気軽にお客さんと話せるひと)
    ④お客様必ず話しかける

    例えばお箸が初めてのようだったら持ち方を教える、
    食べ終わった後に「お味はどうでした?」の一言。
    寒かったら「今日は寒いですね。」、
    話す事がなかったら「日本食は初めてですか?」

    日本人のお客様に話しかける対応と同じにすれば、ものすごく丁寧な人だと思って頂けます。
    ⑤従業員もお客様に話しかけるよう指導する

    お店にいる従業員全員がお客様に料理の説明をしたり声を掛けられるよう、自分自身が従業員達にしっかり料理の説明をすることが大事です。私のお店では、仕事の合間に日本の食文化や食材についての話を欠かさず従業員にしています。そうすることで、従業員がそういった話を覚えていき、お客様とのちょっとした会話に持ち出してくれればお客様との会話が広がるからです。

    その為には、万が一お客様に聞かれて分からないことがあっても「分からないから聞いてきます」と返せる従業員を持つよう、分からないことがあるときは勝手に答えず必ず聞くように指導する必要があります。(その代わりみそ汁にグルテンが入っているかどうか100回聞かれるのを覚悟)

    外国人は日本人のようには働きませんが、その人はその人なりに一生懸命やっていると言う努力を受け入れ、無視したり笑ったりしないようにすることが大切です。
    ━━━インタビューへのご協力、ありがとうございました!
    佐野ヤンセ順子さんの海外でのご活躍ぶり、いかがだったでしょうか。

    寿司JOBおよび、東京すしアカデミーでは、佐野さんの他にも海外で活躍している卒業生から多くの海外就職体験談をいただいております。
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